慶應義塾大学 シラバス・時間割

経済体制論a

サブタイトル権威主義経済論
担当者名伊藤 亜聖
単位2
年度・学期2026 春
曜日時限火1
キャンパス三田
授業実施形態対面授業(主として対面授業)
登録番号50464
設置学部・研究科経済学部
設置学科・専攻経済学科 タイプA・B
学年3, 4
分野専門教育科目選択必修基本科目 G(現代経済)
評語タイプログインすると表示されます(要慶應ID)。
科目概要本講義では、制度的変化と経済発展との関係に焦点を当てつつ、現代中国経済について概観すると共に、世界経済における中国の役割について論ずる。
K-Number FEC-EC-34162-211-07
科目設置学部・研究科FEC経済学部
学科・専攻EC経済学科
科目主番号レベル33年次配当レベル
大分類4専門教育 基本科目
小分類16講義 - 現代経済
科目種別2選択必修科目
科目補足授業区分2講義
授業実施形態1対面授業(主として対面授業)
授業言語1日本語
学問分野07経済学、経営学およびその関連分野

授業科目の内容・目的・方法・到達目標

権威主義とは本来、非民主主義的政治手続を指す政治的概念である。しかし権威主義は正当性の確保と政治的生存のために、独自の体制構築を通じて、経済や社会にも介入する。それは経済開発の推進、市場経済とグローバル経済の利用、検閲と宣伝と情報収集、官僚へのインセンティブ、政治的コネと腐敗、国有企業の強化と民間部門への戦略的出資、産業イノベーション政策、等として現れる。
 経済体制論で、なぜ権威主義を取り上げるのか。かつて、東西冷戦期において比較経済体制論は資本主義市場経済と社会主義計画経済の対比を主題とした。東側社会主義陣営の体制転換によって、この対立は、資本主義市場経済への収斂として解消されたかに見えた。しかし冷戦後、徐々に立ち現れてきたのは権威主義であった。近年は政治的資本主義、権威主義的資本主義、国家主導資本主義などとも呼ばれている。権威主義体制の持続と進化の趨勢のなかで、権威主義体制の下における経済諸問題を取り上げる重要性が、残念ながら高まっている。本講義では旧社会主義国以外にも、アジアの開発独裁論も取り上げながら、研究の系譜を検討する。
 権威主義体制研究の手法も取り上げる。権威主義体制の研究は、データの制限や自己検閲も含めて、独特の条件を有するため、研究手法にも特徴がある。閉鎖体制においては、新聞や公開情報の吟味、限定的インタビューが採用され、一部現地での調査が実施可能になると、インタビュー、サーベイデータの分析が実施された。そして近年では大規模な人事情報、テキストデータ、人工衛星データといったオルタナティブデータ分析も登場している。本講義では方法論的な進展も取り上げる。
 そして権威主義経済の諸問題は、典型的な権威主義国にとどまらない含意を持つ。インドやアメリカを含む「民主主義国」においてもポピュリズムや「民主主義の後退」への懸念が高まっているためである。加えて、移民問題に代表される社会問題や、ロシアのウクライナ侵略や米中関係の悪化といった地政学リスクの高まりのなかで、強い政治指導者と強い政府への期待が、西欧諸国を含めて幅広い国々で高まる機運もある。結果として、ハードな権威主義国以外の「ソフトな事例」も含めると、議論の射程は一段と広くなる。
 以上の問題意識から、本講義では、権威主義体制下の経済諸問題を取り上げる。特に第二次世界大戦後における権威主義体制下の経済に関する①主要論点、②研究系譜、③研究上の制約とそれに対する克服策、そして④最新のアプローチと研究成果を把握し、説明できるようになることを目指す。

実務経験のある教員による授業科目

該当しない

能動的学修形式説明

該当なし

準備学修(予習・復習等)

関連参考文献を読んでおくことが望ましい。

授業の計画

第1回
イントロダクション:なぜ権威主義経済論か?
第2回
学術的系譜~冷戦下の開発独裁論
第3回
学術的系譜~ポスト冷戦期の国家資本主義論
第4回
研究上の諸困難と達成
第5回
研究手法的系譜
第6回
経済成長
第7回
体制支持率と中産階級
第8回
中間テスト
第9回
指導者
第10回
腐敗と政治的コネクション
第11回
情報権威主義
第12回
イノベーション
第13回
経済制裁と国際政治経済
第14回
「ソフトな権威主義」とここまでの振り返り
その他
まとめと期末テスト

成績評価方法

各回レスポンスシート、中間テスト、期末テストで評価する。

授業における生成AIの利用可否・利用方針

本授業では、生成AIの利用を一部認めています。具体的には、以下の場面での使用が可能です。
・アイデア出しや構想段階での補助
・課題の構成案の検討
・調査の補助的な活用(ただし情報の正確性は自身で確認すること)
ただし、以下の点に留意してください。
・AIを使用した場合は、提出物にその旨を明記してください(例:「Geminiを用いて構成案を作成」など)。
・AIによる文章の無断転載や、出典不明の情報の使用は不正行為とみなす場合があります。
・レポート・課題の作成に際しては、独力での思考を求め、AIの使用を禁止します。

テキスト(教科書)

教科書はありません。

コア参考文献
岩崎一郎・鈴木拓著(2010)『比較経済分析 市場経済化と国家の役割』ミネルヴァ書房。
中兼和津次(2010)『体制移行の政治経済学 なぜ社会主義は資本主義に向かって脱走するのか』名古屋大学出版会。
フランツ, エリカ(2021)『権威主義 独裁政治の歴史と変貌』白水社。
溝端佐登史編著(2022)『国家主導資本主義の経済学 国家は資本主義を救えるのか?-』文眞堂。
Egorov, G., & Sonin, K. (2024). The political economics of non-democracy. Journal of Economic Literature, 62(2), 594-636. https://www.nber.org/system/files/working_papers/w27949/w27949.pdf
Egorov, G., Sonin, K. (2025). Authoritarian Institutions. In: Ménard, C., Shirley, M.M. (eds) Handbook of New Institutional Economics. Springer, Cham. https://doi.org/10.1007/978-3-031-50810-3_10
Yang, D. Y. (2024). China: Autocracy 2.0 (No. w32993). National Bureau of Economic Research. https://www.nber.org/papers/w32993

参考書

このシラバスシステムの入力欄に入りきらないので、授業開始時にPDFで配布する。

開発独裁論参考文献
末廣昭(1994)「アジア開発独裁論」中兼和津次編『講座現代アジア2 近代化と構造変動』東京大学出版会、209-237頁。
東京大学社会科学研究所編(1998)『20世紀システム 開発主義』東京大学出版会。
外山文子・日下渉・伊賀司・見市建編著(2018)『21世紀東南アジアの強権政治――「ストロングマン」時代の到来』明石書店。
久末亮一(2021)『転換期のシンガポール――「リー・クアンユー・モデル」 から 「未来の都市国家」へ』アジア経済研究所https://ir.ide.go.jp/record/51972/files/EBK000300_000.pdf.

国家資本主義論参考文献
池本修一編著(2021)『体制転換における国家と市場の相克 ロシア、中国、中欧』日本評論社。
岩崎一郎編著(2018)『比較経済論講義』日本評論社。
宇山智彦(2014)「権威主義体制論の新展開に向けて――旧ソ連地域研究からの視覚」『日本比較政治学会年報』第16 巻, p. 1-25. https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiji/16/0/16_1/_article/-char/ja
中兼和津次(2010)『体制移行の政治経済学 なぜ社会主義は資本主義に向かって脱走するのか』名古屋大学出版会。
日臺健雄(2015)「「国家資本主義」論の理論的系譜」『比較経済研究』52 (1), 19-31頁。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjce/52/1/52_1_19/_pdf
ブレマー, イアン(2011)『自由市場の終焉 国家資本主義とどう闘うか』日本経済新聞社。
溝端佐登史編著(2022)『国家主導資本主義の経済学 国家は資本主義を救えるのか?-』文眞堂。
ミラノヴィッチ, ブランコ(2021)『資本主義だけ残った 世界を制するシステムの未来』みすず書房。
Guriev, S., & Zhuravskaya, E. (2009). (Un) happiness in transition. Journal of economic perspectives, 23(2), 143-168.

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