慶應義塾大学 シラバス・時間割

生命の教養学

サブタイトル復讐・応酬
担当者名石川 学, 有川 智己, 川上 了史, 西尾 宇広, 見上 公一, 三原 龍太郎, 林 秀光
単位2
年度・学期2026 春
曜日時限月4
キャンパス日吉
授業実施形態対面授業(主として対面授業)
登録番号27628
設置学部・研究科商学部
設置学科・専攻商学科
学年1, 2
分野総合教育科目Ⅲ類(学際的・総合的科目)商学部設置講義科目(05学則)
総合教育科目Ⅲ類(学際的・総合的科目)講義科目(18, 19学則)
評語タイプログインすると表示されます(要慶應ID)。
科目概要本授業は、ふだんはさまざまな学部に分かれて学んでいる学生たちが、「生命」という共通の主題を起点に、領域横断的な「教養」の見地から、より広い視野とより深い思考を身につけることを目指すものである。具体的には、週替わりで11名のゲスト講師の方々にご登壇いただくオムニバス形式の連続講義により、理系・文系の垣根を超えた多様な専門分野の知見を通じて「生命」にまつわる主題にアプローチしていく。
K-Number FBC-BC-01353-211-88
科目設置学部・研究科FBC商学部
学科・専攻BC商学科
科目主番号レベル0学部共通
大分類1総合教育科目
小分類35Ⅲ類学際的・総合的科目 - 教養スキル
科目種別3選択科目
科目補足授業区分2講義
授業実施形態1対面授業(主として対面授業)
授業言語1日本語
学問分野88総合・複合領域(学際)

授業科目の内容・目的・方法・到達目標

この授業は「生命とは何か」「生きるとはどういうことなのか」という問いから始まる知的探究への誘いです。「生命」については生物学をはじめ、主に自然科学に属する諸分野が「生命科学」の枠組みで研究を進めていますが、それだけではありません。哲学・文学・歴史学・文化人類学などの人文学、経済学や政治学といった社会科学もまた、それぞれ異なる角度から「生命」を問い続けているのです。もとより一面的には捉えがたいこのような対象にアプローチするうえで、必要なものとは何でしょうか。それは、特定の学問領域に偏ることなく広く思考の素材を追い求め、各領域の研究成果には十分な敬意を払いつつも、その雑多な素材を元手として新たな知を創り出そうとする態度にほかなりません。ときに「教養」とも呼ばれるそのような態度を涵養する場、それがこの「生命の教養学」という授業です。

2026年度のテーマは「復讐・応酬」です。ハンムラビ法典の有名な「目には目を」が示すとおり、古代社会においては私的復讐が法的・宗教的な規制の対象となるほど一般的で、復讐心はいわば人間の根源的な感情と言えます。現代の世相を見ても、人間は今なお復讐感情を制御するのとはほど遠い状況ですが、とはいえ、復讐はただおぞましい振る舞いと見なされてきたわけではありません。文学や芸術、芸能の世界では、古今東西、復讐を題材とした物語が描かれ、人々の心を感動させてきました。その感動は、復讐の持つ、単純に利己的なものにとどまらないコミュニケーションとしての特質——たとえば、愛する者の無念を相手にぶつけることにあるような——に由来しているようにも思われます。

こうしてみると、あたかも「復讐」は人間に固有な振る舞いのようですが、そのこと自体を問いに付すこともできるでしょう。類人猿をはじめ、報復的な所作を取ることが報告されている種が存在しますし、同時に、そうした動物の行動に「復讐」という人間的な概念を当てはめることへの批判もあります。確かなのは、こうした視座から復讐とは何かを問うことは、人間と動物の境界を問うこと、あるいは人間と動物の通底を問うことにつながるということです。さらに、「復讐」の人間性をカッコに入れて、ある特定のアクションに対してやり返すこと、すなわち「応酬」という広い意味で捉えれば、昆虫や植物のレベル、微生物や細胞のレベル、ひいては物質のレベルの反応にまで適用できます。それらが呈す相互的/対他的なプロセスは、人間固有の「人間性」を相対化する内容を持つのでしょうか。

以上のような問題意識のもと、本授業では、幅広い専門の視点から「復讐・応酬」に迫ります。予定されているのは、進化生物学、動物行動学、ケミカルバイオロジー、感染症学、神経心理学、AI研究、経済法・商法、近現代フランス史、ドイツ文学、中国文学などといった分野の専門家による講義です。

※教養研究センターでは、2026年度の授業について、以下の要領で、対面ガイダンスを実施します。
「生命の教養学」についても、担当教員より、委細の説明があります。
履修を希望される方は、ぜひご出席ください。

【2026年度教養研究センター設置科目ガイダンス】
日時:2026年4月2日(木)13:00~14:30
場所:日吉キャンパス第4校舎独立館地下2階 DB203教室
https://www.keio.ac.jp/ja/maps/hiyoshi.html

※本授業は、以下の「生命の教養学」企画委員により、講師の招聘をはじめとした企画運営を行っています。
石川学(商学部准教授、企画委員長)
有川智己(経済学部教授)
川上了史(理工学部専任講師)
西尾宇広(文学部教授)
見上公一(理工学部准教授)
三原龍太郎(経済学部准教授)
林秀光(法学部教授)

実務経験のある教員による授業科目

該当しない

能動的学修形式説明

ディスカッション、ディベート
グループワーク

準備学修(予習・復習等)

各回の講義について、問題関心を深めたうえで、授業に臨むこと。
折々、各回の講義内容を振り返っておくこと。
それに必要なだけの時間を割いてください。

授業の計画

第1回
導入
(履修希望者が多数の場合は、この回で選抜を実施します。志望動機を筆記していただきますので、書く内容をあらかじめ考えてきてください。)
第2回
山口早苗(慶應義塾大学理工学部専任講師)
■演題:戦後の日中関係のあゆみ—歴史問題と戦後処理をめぐって
■内容:直接の戦争と国共内戦を経た後の日中関係は大きくその様相を変え、日中間では歴史問題と日本の戦後処理を巡ってたびたび論争が繰り広げられることとなった。こうした歴史を振り返り、今後の日中関係について考えてみたい。
第3回
西尾宇広(慶應義塾大学文学部教授)
■演題:正義としての復讐?—ドイツ文学から読む報復の歴史
■内容:古来より文学は「復讐」を好んで主題化してきた。それはこの題材が「法」や「正義」という巨大な問題と深く結びついているからだ。本講義では、この観点でとくに興味深い歴史を持つドイツ文学を例に、中世から近現代に至る「復讐」の社会的・文化的な意味の変遷を考える。
第4回
寺澤悠理(慶應義塾大学文学部教授)
■演題:復讐の価値を心理学から考える
■内容:復讐がもたらす結果は個人にとって必ずしも有益ではないにもかかわらず、世界中で一般的な行為である。人がいつ、どのような状況において復讐を行うのかを検証した心理学研究を通して、人の心における復讐の論理性や価値を検討したい。
第5回
上村佳孝(慶應義塾大学商学部教授)
■演題:オスとメスの間の進化の応報
■内容:動物の繁殖は、雌雄の協力・共同のもとに交尾や子育てがおこなわれるものと認識されがちである。しかし、実際には雌雄間の対立(=利害の不一致)の上に成り立っており、進化の応報が生じていることを、実例をあげて解説したい。
第6回
南宮湖(慶應義塾大学医学部感染症学教室教授)
■演題:歴史に学ぶ感染症の復讐と応酬
■内容:COVID-19のパンデミックを通じ、感染症が社会や文明の在り方を大きく変え得る存在であることが再認識された。歴史を振り返ると、ペストやコレラも人類社会と共に流行を繰り返してきた。本講義では、ゲノム解析など最先端の科学的知見を手がかりに、歴史における感染症の「復讐と応酬」を概説する。
第7回
舘葉月(慶應義塾大学文学部准教授)
■演題:「復仇収容所」をめぐる独仏の応酬—第一次世界大戦期の戦争捕虜と国際法
■内容:未曽有の規模となった第一次世界大戦期、各交戦国が収容する戦争捕虜の数もまた膨大なものとなりました。戦争捕虜はどのように扱われ、国際法は彼らをどこまで保護し得たのか、特に強い敵対関係にあった独仏の事例を中心に考察します。
第8回
大沼あゆみ(城西大学特任教授)
■演題:生物多様性保全のための規制と応酬
■内容:生物多様性保全のために、さまざまな規制手段が導入されてきた。しかし、それらの規制手段の効果は同一ではなく、市場・ステークホルダー・不法行為者・生物の間の複雑な応酬により大きな差異がある。本講義では「経済」の影響を念頭に、これらのメカニズムを説明する。
第9回
廣瀬翔太郎(朝日大学法学部講師)
■演題:「政策と法」の歴史からみる「復讐・応酬」
■内容:経済法(独占禁止法)の歴史を研究するなかで見てきた、政策決定や立法過程における政治家や官僚の交渉・駆け引き事例の紹介を通じて、「復讐・応酬」について考えてみることとする。
第10回
栗原聡(慶應義塾大学理工学部教授)
■演題:AIは生命にどこまで近づきそして越えることができるのか?
■内容:今後、高度な自律性や汎用性を持つAIが誕生し、人とAIとの共生社会が到来するという見方があるが、AIは人に対して報復するといったことは起きえるのであろうか? また、AIと共生する社会において、AIが介入することで、人類における報復という行為にどのような変容が起こるのであろうか? これらの可能性について考察を試みる。
第11回
萩原伸也(理化学研究所環境資源科学研究センターチームディレクター)
■演題:植物をとりまく物質の応酬
■内容:植物は、自由に動き回ることができないため、水や栄養、日当たりや温度、周辺生物など、周囲の環境にうまく適応する仕組みをもっている。本講義では、その過程で起こっている物質の応酬について考察する。
第12回
香田啓貴(東京大学大学院総合文化研究科准教授)
■演題:霊長類の社会から見た復讐と応酬の生物学的起源
■内容:ヒトが他者に抱く感情や社会的な振る舞いなどの生物学的な起源を考えた場合、ヒトに近縁なサルの社会や行動を眺めることが良い手掛かりとなる。講義では、霊長類社会における利他性の進化や、その中で生じる感情などについての論考を行う。
第13回
グループディスカッション、ふりかえり
第14回
総括・筆記試験
その他
課題・レポート

成績評価方法

各授業回への出席および講義後に書くミニ・レポート(50%)、授業内試験(50%)。授業への出席は、ミニ・レポートの提出によってチェックします。

授業における生成AIの利用可否・利用方針

調査に関しては利用を認めます。ただし、作成された文章の無断転載は認めません。
ミニ・レポートの執筆や試験答案の作成にあたっては、自分自身で文章を紡いでください。

テキスト(教科書)

なし

参考書

必要に応じ、授業内で指示します。

担当教員から履修者へのコメント

ログインすると表示されます(要慶應ID)。

質問・相談

ログインすると表示されます(要慶應ID)。