Keio University Syllabus and Timetable

READINGS IN SOCIOLOGY 2A

Subtitleポピュラーカルチャーとポストフェミニズム/第三波フェミニズム
Lecturer(s)NAKAMURA, KASUMI
Credit(s)1
Academic Year/Semester2022 Fall
Day/PeriodTue.2
CampusMita
Class FormatFace-to-face classes (conducted mainly in-person)
Registration Number06355
Faculty/Graduate SchoolLETTERS
Department/MajorHUMANITIES AND SOCIAL SCIENCESOCIOLOGY
Year Level2, 3, 4
FieldSPECIALIZED SUBJECTS
K-Number FLT-SO-23131-211-08
Course AdministratorFaculty/Graduate SchoolFLTLETTERS
Department/MajorSOHUMANITIES AND SOCIAL SCIENCESOCIOLOGY
Main Course NumberLevel2Second-year level coursework
Major Classification3Specialist Education Introductory/Overview Course
Minor Classification13Common to Major in Sociology - Literary Document Studies
Subject Type1Required subject
Supplemental Course InformationClass Classification2Lecture
Class Format1Face-to-face classes (conducted mainly in-person)
Language of Instruction1Japanese
Academic Discipline08Sociology and related fields

Course Description/Objectives/Teaching Method/Intended Learning Outcome

この授業では、ポピュラーカルチャーについて、フェミニズム、特にポストフェミニズム論と第三波フェミニズムの観点から分析することを目標とし、このトピックに関連する文献を輪読していきます。

ポストフェミニズムは、ネオリベラリズムと呼応した状況であり、思想/実践です。ネオリベラリズムとは、福祉国家の危機に対応して1980年代以降の先進国で登場した、市場原理主義に基づいて、個人がグローバル市場に責任と自由を併せ持って参入することで国家の資本蓄積の条件が最適化できると信じ、それを遂行しようとする政治思想です。ここでは徹底した個人主義が採用され、特に市場において階層、人種、ジェンダー等の差異が等閑視されたうえで、資本価値をどれだけ生み出せるかは「自己責任」であるとされます。そして、その市場価値が、とりもなおさず当該個人の価値であるとされます。
ポストフェミニストは、第二波までの旧来のフェミニズムおよび女性解放運動を批判しつつ、社会的な連帯という枠組みではなく、個人が個別に市場化された文化に参入することで「女としての私らしさ」を達成できると主張します。ここにおいて「女」はネオリベラリズム時代の労働者の特権的なシンボルとして立ち現れるのです。なぜならば、ヴァレリー・ウォーカーダインが論じているように、ネオリベラリズムと市場原理主義によって求められるようになったフレキシブルな自己管理、つまり自身の身体を他者化、対象化、商品化することは、「女らしさ」においては今までもずっと求められてきたことであるからです。つまり、ポストフェミニズム状況における女性には、市場を通した「自分らしさ」の達成が求められていると言えます。それは具体的には、ネオリベラリズムとそれにともなう個人主義に由来する自己管理・自己責任・自助努力のレトリックを内面化し、自身の女性身体とセクシュアリティを重要なアイテムとして用いながら、日々労働することです。

ポストフェミニズムにおける女性表象の変化に影響されつつも、ポストフェミニズムの在り方を批判して登場したのが、第三波フェミニズムです。主な批判点は、ネオリベラリズム的システムのなかに性差別的構造が内在的に含まれていることにあります。ウォーカーダインによれば,ネオリベラリズムのなかで要請される自己管理や自己責任は「女らしさ」をかたちづくるために長年要請されてきたものであり,ネオリベラリズムと「女らしさ」はある種の共犯関係にあったとされます。よって、ネオリベラリズムにおける女性の特権化とは,一方で労働者として重宝されつつも,もう一方で女性であることによって労働者としての市場価値が削減された場合,例えば出産・育児によって労働可能時間が減った時には,容易に労働市場から切り捨てられるということでもあります。また,このように自身の身体とセクシュアリティをも資産としながら日々労働する女性たちは,文化的賞賛を受けつつも単に記号として消費されてしまうこともあります。「市場原理にさらされるなかで,献身とコミュ力でサヴァイヴしていくさまが日々実況中継されるAKB48」(三浦玲一,2013,「ポストフェミニズムと第三波フェミニズムの可能性――『プリキュア』、『タイタニック』、AKB48」三浦玲一・早坂静編『ジェンダーと「自由」――理論,リベラリズム,クィア』彩流社,71)などがその例と言えます。しかし、個人主義の影響もあり、こうしたネオリベラリズムのシステム内部の性差別構造はあまり表立って指摘されてきませんでした。そこで、この時代における女性たちの新しい連帯の形を考え、性差別構造を乗り越えようとするのが、第三波フェミニズムであると言えます。

フェミニズム、その中でも特に上記のようなポストフェミニズム/第三波フェミニズムの観点から、現代のポピュラーカルチャーについて再考するのが、本授業の目的です。ここでのポピュラーカルチャーはアニメ、漫画、ゲーム、映画、演劇、小説、ポピュラー音楽、アイドル、声優、2.5次元文化、YouTuber、VTuberなど、広く大衆に広まり、主にメディアを通して商品化されている文化全般を指します。こうした文化における具体的な事象にじっくりと向き合い、フェミニズムやジェンダー・セクシュアリティ論の概念(道具立て)を用いるとどのように捉えることができるかを、その事象を一面的に肯定するのでも一方的に否定し切り捨てるのでもなく、時に葛藤を抱えながら丁寧に考え、議論していきます。

具体的な授業の運営方法としては、毎回読んでくる文献を指定し、発表者を決めて、発表者の発表のあとに全体で議論する時間を持ちます。
発表者には、文献の要約、文献へのコメントや疑問、文献から導き出される論点(ディスカッションポイント)を記したレジュメを作成することが求められます。学期を通して一度は発表者を経験してもらいます。
また、発表者以外のすべての参加者も、毎回指定された文献を通読しておくことが求められます。

扱う文献に関しては、初回授業の際に受講者の関心や希望を聞き取った上で決定します。
基本的には読みやすさを考慮して日本語文献(もしくは邦訳のある文献)から選ぶつもりですが、みなさんの意欲や希望に応じて、英語文献に挑戦することも可能です。
具体的な文献は履修希望のみなさんと相談して決定できればと思いますが、今のところ考えている文献候補については、「5.教科書」に記しました。こちらはあくまでも候補ですので、履修希望の方はどの文献を読みたいか、またここに記載がない文献で読んでみたいものがあるかなどを少し考えておいてみてください。

Course Plan

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Method of Evaluation

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Textbooks

初回授業の際に受講者の関心や希望を聞き取った上で決定しますが、現在文献候補として考えているのはたとえば以下です。受講者のみなさんから、ここにない文献を提案してくださるのも歓迎です。希望があれば英語文献を取り扱うことも可能です。
また、一つの文献を通読する形のほか、受講者の関心に合わせて複数の文献から一部の章を取り出して講読することも選択肢としてあり得ます。

三浦玲一,2013,「ポストフェミニズムと第三波フェミニズムの可能性――『プリキュア』、『タイタニック』、AKB48」三浦玲一・早坂静編『ジェンダーと「自由」――理論,リベラリズム,クィア』彩流社,59-79. ISBN:978-4-7791-1875-3
安田洋祐,2016,「女性アイドルの「ホモソーシャルな欲望」――『アイカツ!』『ラブライブ!』の女同士の絆」『ユリイカ』2016年9月臨時増刊号 総特集=アイドルアニメ-『アイドルマスター』『ラブライブ!』『アイカツ!』、そして『KING OF PRISM by PrettyRhythm』…二次元アイドルのスターダム- ISBN:978-4-7917-0313-5
田中東子編著/竹田恵子・上村陽子・中條千晴・中村香住・東園子・有國明弘・渡辺明日香・村上潔・梁・永山聡子,2021,『ガールズ・メディア・スタディーズ』北樹出版. ISBN:978-4-7793-0658-7
河野真太郎,2017,『戦う姫、働く少女』堀之内出版. ISBN:978-4-906708-98-7
田中東子,2012,『メディア文化とジェンダーの政治学――第三波フェミニズムの視点から』世界思想社. ISBN:978-4-7907-1568-9
香月孝史,2020,『乃木坂46のドラマトゥルギー――演じる身体/フィクション/静かな成熟』青弓社. ISBN:978-4-7872-7431-1
溝口彰子,2015,『BL進化論――ボーイズラブが社会を動かす』太田出版. ISBN:978-4-7783-1441-5
東園子,2015,『宝塚・やおい、愛の読み替え――女性とポピュラーカルチャーの社会学』新曜社. ISBN:978-4-7885-1416-4
『ユリイカ』2020年9月号 特集=女オタクの現在-推しとわたし- 青土社. ISBN:978-4-7917-0390-6

Reference Books

ポストフェミニズムや第三波フェミニズムなどのフェミニズムの最近の潮流については、授業でも適宜解説する予定ですが、事前に概要を知りたい人には以下が参考になります。

高橋幸,2020,『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど――ポストフェミニズムと「女らしさ」のゆくえ』晃洋書房. ISBN:978-4-7710-3380-1
菊池夏野,2019,『日本のポストフェミニズム――「女子力」とネオリベラリズム』大月書店. ISBN:978-4-272-35045-2
『現代思想』2020年3月臨時増刊号 総特集=フェミニズムの現在 青土社. ISBN:978-4-7917-1394-3

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Question/Comments

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